たったひとつの冴えたやりかた

 気がつくともう12月になりました。初めまして、まーくと申します。
工学部学年不詳の、早川書房東京創元社無くしては生きていけないSF好きで,活動場所に早川の青背本が落ちていると、いつも僕のせいになります。
実際問題、それで間違いだったことはいまだかつて無いですが。


 現在、友蔵では読書マラソンコメント大賞の選考を行っています。
読書マラソンについては最終選考のときに改めて詳しくと言うことにして、
今はひとまずここら辺を読んでみてください。
さて、集まったPOPカードを読んでいて思うのは、組合員の皆さんが読んでる本がいまいちバリエーションに乏しいということ。まあ、伊坂幸太郎東野圭吾の本にハズレが無いということは事実ですし、古典小説の魅力には抗えないものがあるわけですが、たまにはちょっと外してSFなんかもどうかと思うわけです。


 というわけでかなり強引な導引部となりましたが、今回紹介するのはジェイムズ・ティプトリー・Jr.の「たったひとつの冴えたやりかた」です。
作者のティプトリー・Jr.については、10歳でアフリカ探検を経験していたりだとか、元CIA職員だったりとかと色々と面白いエピソードがあるのですが、ここでは割愛することにしましょう。
とりあえず言えるのは、20世紀が生んだ有数のSF作家であるということです。
 さて、氏が最晩年の頃に書かれた本作は、「遥か未来において異星人が、遥か昔に滅び去った人間という種を研究するために、図書館からいくつかの古文書を取り寄せる」という設定で書かれた連作集で、次の3作が収録されています。


たったひとつの冴えたやりかた」(表題作)
16歳の少女が誕生日プレゼントとして貰った小型宇宙艇。
彼女は家出して未知の星野へ探検に出かけるが、小さな異星人との出会いで旅は思わぬ方向に…

「グットナイト・スイートハーツ」
サルベージと救難で生計を立てている宇宙船乗り。
彼の前に現れたのは、かつて愛した女性と、まだうら若い彼女のクローンであった…

「衝突」
暴虐きわまる「ジューマン」なる種族と接触し、戦争状態にある異星人。
彼らのもとに、一隻の人類の船がファースト・コンタクトを試み接近しつつあった…


「GO型太陽」やら「リフト」やらといった独特の用語が唐突に出てくるので、
それに戸惑う方もいらっしゃるかもしれませんが、ストーリー自体は文句なしに素晴らしいです。
特に表題作は、「これを読んでいてハンカチが要らなかったら、あなたは人間でない」とまで言われる名作で、何よりも宇宙が大好きでちょっとおませな少女の冒険を時に生き生きと、時に切なく描いています。
 SFというジャンルを食わず嫌いしている人に是非読んで頂きたい一冊です。


Text by まーく